205．【回顧】夏休み、13日目【懐古】

熱は下がらない。
意識が途切れる。
ぼうっとする。

そんな、13日目を過ごした。

夜、寝る。
なんとなく、エレキベースを抱えて、弾きながら寝よう。
…蚊がうるさい。
仕留めても、仕留めても、きりがない。

不意に左腕の感覚に違和感を覚える。
動作が機敏過ぎる。触覚が鈍過ぎる。
俺の腕じゃなくなったようだ。
右手で左手を触る。
「こんな感触だったっけ」

最後の蚊を仕留める。
落ち着く、外を見る。
東はもう橙色。
隣町の山の中腹、無名戦士の墓の照明が一番星のように輝く。
朝は6時に起きるつもりだった。
寝るのは諦めよう。
頭は依然痛む。

ときに、盆過ぎから涼しくなった。
今朝も甚平ではじわじわ寒いくらいだ。
そんな寒さを吹っ切るべく、窓を全開にする。
南東からの風がふわりと通り抜ける。
俺の部屋、風が通るんだ。
部屋が浄化されていく。
そんな気がした。
清々しい。とても。
俺は大きく伸びをした。
そんな午前4時30分。

起きるのは6時のつもりだった。
1日は6時から始まるはずだった。
1時間半、何をしよう。
熱は依然あるようだ。吐き気、眩暈、頭痛。
とても、勉強は出来そうに無い。
そういえば、まだ組み立ててないミニ四駆のキットがあった。
暇つぶし、組み立てよう。

部屋に日光が満ちる。
日の出。
目を細める。
いつの間にか、ミニ四駆は出来上がっていた。
とても懐かしい。
懐かしい。
目を細める。
おもちゃ、日光、一番に啼く鶏、続き目を覚ます鳥。
日光を直に見たのは何日ぶりだろうか。
朝の風景を感じたのは何週間ぶりだろうか。
俺の原点はここにある。
そういえる気がした。
こんな朝なら、いつだって戻ってきても良い。

それから、どうしたのだろう。
記憶は細々。
細分化され、パズルのように散らばっている感覚。
時系列があやふや。
当時の日光、雰囲気などで判断。

熱はやっぱりあったようだ。
吐き気。
眩暈。

だが、
こんな朝なら、いつだって戻ってきても良い。